【認知行動療法(CBT)について】
さて、前回は【気持ちは状況でなく考え方に左右される】 ことをお話しました。
私たちは特に心の余裕がない時に、状況そのものが気持ちを作り出していると思い込みます。
しかし、よく感じてみると【状況】から【気持ち】が出てくる間のプロセスにある、【あなたの中にある考え方・受け取り方】に気持ちは左右されているのです。
図で表すと、
【状況】 → 【気持ち】 ではなく
【状況】 → 【あなたの中にある考え方・受け取り方】 → 【気持ち】 になります。
この【あなたの中にある考え方・受け取り方】は、前回の例で言うと、
Aさんでは『自分にはできるはずがない』とか『絶対失敗するに違いない』に当たります。
Bさんでは、『自分にとってチャンス到来だ』『とてもいい経験ができる』に当たりますね。
では、この【あなたの中にある考え方・受け取り方】はどこでどのように形作られたのでしょうか?
答えは、幼いころから今まで体験してきたことが積み重なって、普段は意識していない無意識に形作られています。
また、体験の中でインパクトが強烈だったものや回数が多かったものに、とくに影響を受けるのです。
たとえば、幼いころに一回でも犬に噛まれ、強烈に怖い思いをした人は、【犬がいる】→【怖い】と反応し、その間にある考え方・受け取り方は、【犬は危険だからすぐ逃げる】のようになります。
また、幼いころから親に何度も『失敗してはいけない』というメッセージを送られてきた人は、【あたらしい仕事を任される】→【不安や緊張】と反応し、その間にある考え方・受け取り方は、【完全にできないといけないし失敗は許されない】のようになります。
そこで“認知行動療法”では、ただ不安や緊張に呑み込まれたり、そうなってしまう自分を責めて落ち込んだりする悪循環を断つために、まずあなたの無意識の中にどんな【考え方・受け取り方】があるのか?に気づくことが大切だと考えます。
「気づくことが大切だ」ということを象徴するように、“認知行動療法”では【あなたの中にある考え方・受け取り方】のことを【自動思考】と呼んでいます。
私たちは強い感情がわいてきた時には、すでに【あなたの中にある考え方・受け取り方】を無意識に通って、文字通り自動に思考しています。
無意識ですから意識的に感じてみないと、または練習してみないと普段【自動思考】には気づかないものなのです。
知らぬ間に私たちの気分や行動や身体反応は、その自動思考によって左右されているのです。
そして、それが積み重なって人生も大きく左右されているのです。
人間は具体的な問題意識をもたないと、変わろうという思いにはなりません。
ですから、無意識にしていることに、まず意識的に『気づくこと』はとても大切なことなのです。