【認知行動療法(CBT)について】
前回は【自動思考】の【認知の歪み】に気づくことが大切なことをお話しました。
そして認知療法では、実際の日常の場面で、あなたの中にどんな【自動思考】が働いていて、さらにその【認知の歪み】に気づいていくために、ワークシートをお渡ししてホームワーク(宿題)をしてもらいます。
認知行動療法は、情報処理モデルや認知モデルを基礎としたマニュアル化されたアプローチのため、心を何だか機械的に扱っているように感じる人も多いと思います。
しかし、カウンセリングの場面では、守られた空間と時間の中で、信頼関係を築きながらあたたかい雰囲気で一緒に行っていくものです。
そして、実際にホームワークを行ってみるとよくわかるのですが、自分の認知の仕方を知る練習をしていくだけでも多くの効果が認められるのです。
前回に書いたように、自分と症状やお悩みを切り離して、少しでも自由になって症状やお悩みをコントロールできる自分を確保したり、自分を客観視してなるべくニュートラルな自己イメージに近づけることができます。
自分自身を客観視しながらも冷静に自分とつながる練習にもなるため、自分のことがよくわかるようになって理解が進み、今まで気づかなかった気持ちや感情も段々とわかるようになります。
たとえば、今まで書いてきたAさん(私が創造した架空の人です)は、日常の場面で不安や憂鬱になった時の状況を、ワークシートを使って実際に書き出して見ました。
そして、カウンセリングで話し合っていくと、今まで同じと思っていたつらい状況にも、不安や憂鬱・恐怖など様々な気持ちや感情があり、その度合いも異なることがわかってきました。
また、【自動思考】を意識して書き出して見ると、いくつかのパターンに分かれることもわかってきました。
そのパターンの中で、Aさんが取り組みやすいものの中身を一緒によく検討していくと、今まで少しできていた事や何とかできそうな事まで『自分はダメだ!自分にはできない!』と思い込んでいることに気づいていきました。
さらに、【認知の歪み】を再構成するワークシートをして認知の歪みそのものに取り組んでいくと、少しずつそれが修正されて気持ちも楽になっていくのでした。
また、この時点で【認知の歪み】を自分で修正できる余裕があるなら、そのことを意識してできるところから段階的に行動を変えて見て、その結果を確認したり感じてみると自信にもつながります。
Aさんで言えば、【自動思考】が働く状況の中の取り組みやすくて変えることができそうな行動を、できる範囲で実際に変えていくと、周囲の人の反応も良く、緊張しながらも何とかなっている自分を感じることができました。
そして、少しずつ実際の日常の場面で自信をつけていくのでした。
こういった気づきや小さな行動を、カウンセラーのサポートを受けながら一緒に進めていくのです。
また、前述のように【認知の歪み】そのものを修正していく【認知再構成法】などのワークも様々用意されています。